【戸籍のプロが教える出生届の書き方】訳ありの場合もパターン別に紹介!

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出生届ってどう書くか?出し方って知っていますか?
実はあなたの状況によって大きく変わります。

出生届はどう書けばよいのだろう?
誰が出しに行けばいいのだろう?
こういった基本的な事から、なかなか聞きずらいワケありの場合も含めて、戸籍の専門家、アポロアイシーティー株式会社の代表取締役、岩永美香がレクチャーいたします。

 

出生届の基本的な情報

出生届の基本的な情報
「出生届」は人が誕生した時に最初に行う届出であり、公にもその人の存在を証明する 「戸籍(注1)」の原点です。

生んでくれた親に感謝、そして、出生届を出してくれた人にも感謝です。
十人十色の様々な人生のスタート地点に立つわけです。

どのような条件の下でも、誰かが出生届を出してくれることで、自分の存在が公的に認められ、学校に通う事ができたり、行政サービスを受けたり、仕事に就くこともできるのです。

(注1)「戸籍」とは日本人であることを公的に証明する公文書である。

出生届の届出先は?

出生届の届出先は、次の3つのうちのどちらかになります。

1.届出人の所在地
2.出生の届出により、生まれた子が入籍する戸籍のある本籍地
3.子が生まれた地

この条件が当てはまる役場の戸籍の窓口へ出してください。

出生届の届出期間は?

出生届の届出期間は、赤ちゃんが産まれてから14日以内です。

ただし国外で生まれた日本国民である赤ちゃんの場合は出生日から3か月以内で「国籍留保の届出(注2)」も同時に行うのが原則。

(注2)国籍留保の届出とは出生により外国籍及び日本国籍を取得する子が外国で出生した場合は、出生の日から3か月以内に、出生届とともに行う届出。国籍留保の意思を表示しなければ、出生のときにさかのぼって日本国籍を喪失するとされている。

出生届の届出人は?

出生届の届出人は、

婚姻関係にある両親の子(嫡出子)の場合⇒父または母のどちらかまたは両方。ただし、出生前に離婚している場合には「母」のみ。
婚姻関係にない両親の子(嫡出でない子)及び父未定の子の場合⇒「母」のみ
父母がともに届出ができない場合⇒第2順位=「同居者」
この場合は「その他」欄に「母は病気療養中、父は海外出張中のため、同居人が届出をする。」等と記入する。

第3順位=「出産に立ち会った医師、助産師又はその他の者」
この場合は「その他」欄に「父は出生後死亡、母は出産後病気のため、出産に立ち会った医師が届出をする。」等と記入する。

以上が出生届の基本的な情報です。

 
ただ、夫婦の子として生まれる赤ちゃんもいれば、シングルマザーの子として生まれる赤ちゃんもいる。
元気な赤ちゃんもいれば、生まれる前や生まれてすぐに命を落とす赤ちゃんもいる。
実の親が育てられないので、親の顔を知らずに育つことになる赤ちゃんもいる。

生まれたときに親の事情で「出生届」を出してもらえなかった人が、日本国内に1万人くらいいるのではないかとも言われているのです・・・

次からは多様なケースの場合の出生届の書き方、出し方についてお話しします。
 

 

シングルマザーが出産した場合

シングルマザーが出産した場合
シングルマザーが出産された場合の「届出人」は生まれた赤ちゃんの「母」のみです。

父母との続き柄については以下の2通りになります。

① 赤ちゃんのお母さんに婚姻歴がない、もしくは直前の離婚から300日以上経過している⇒「嫡出(ちゃくしゅつ)でない子(=婚姻関係にない父母の子)」にチェックを入れます。
② 赤ちゃんを妊娠した時期には結婚していたが、出産前に離婚した⇒「嫡出子(=婚姻関係にある父母の子)」にチェックを入れます。

 
出産時に未婚で親の戸籍に入籍している女性を母とする赤ちゃんの戸籍の作り方は以下のとおりです。

① 赤ちゃんは母の氏を称して母の戸籍に入籍することになります。
② 母は父母の戸籍からは除籍し、母を筆頭者とする新戸籍を編製し、生まれた子はその戸籍に入籍します。
③ この場合は、「その他」欄に「母につき新戸籍を編製 新本籍 ○○県△△市□□123番地」等と記入することになります。

その後、赤ちゃんの両親が結婚した場合の扱いについて、知りたい場合は「KOSEKIガイド」をご覧ください。

 
生まれた子の母が前に結婚していた事があったり、親の戸籍と分ける届出(注3)を出していたりして、すでに自分を筆頭者とする戸籍に入籍している場合には、生まれた子はその戸籍に入籍します。

(注3)「親の戸籍と分ける届出」=「分籍届」という。20歳以上の未婚者なら出すことができる届出。

 

母親の離婚日から300日以内に出産した場合

母親の離婚日から300日以内に出産した場合
赤ちゃんのお母さんの離婚から300日以内に生まれた赤ちゃんの出生届の届出方法は以下のとおりです。

赤ちゃんの「お父さん」が誰になるかという問題がキーになります。

離婚してから300日以内に生まれた赤ちゃんの「父」は、戸籍法上のスタンダードな流れでいくと、「母の(直前に分かれた)元夫」が「父」ということになり、嫡出子ということになります。
戸籍上も赤ちゃんの「父欄」には「母の元夫の氏名」を記載します。

 
赤ちゃんの「父」を「母の元夫」としない戸籍を作るためには、次の2つの方法があります。

ア.「母の元夫」と「赤ちゃん」が血縁関係にないということが分かる、「親子関係不存在の裁判の謄本」を添付する。

イ.離婚後に妊娠したことが判るよう、医師の作成した「懐胎時期に関する証明書」を添付する。(ただし、市区町村は管轄法務局の指示により処理をすることになるので、出生届の受理決定には時間がかかることが予想されます。)

ア、イとも「父欄」の記載は空欄で「嫡出でない子」となります。

 
父欄が空欄の子の戸籍に父の氏名を記載するには、父が「認知届(注4)」を出す必要があります。

「出生届」を出した時点で父が「認知届」を出していても、赤ちゃんは父の苗字を名乗ることはできませんし、父が出生届の届出人になることもできません。

父母が婚姻する事により、父母と同じ苗字を名乗ることができるようになります。

(注4)「認知届」とは婚姻関係にない父母の間に生まれた子(嫡出でない子)の「父」が自分の子として認知する届

 
詳しくは弊社の無料で使える「KOSEKIガイド」をお使いください。
3回クリックで完了します。

上記のサイトにアクセスすると、このような画面になります。

母親の離婚日から300日以内に出産した場合

まず右側の出生届プレビュー上の「父母との続き柄」欄をクリックしてください。

母親の離婚日から300日以内に出産した場合
画面中央のポップアップ画面の、上から2つ目のボタンをクリックしてください。

母親の離婚日から300日以内に出産した場合

次に左側解説画面の「【嫡出子】について」の後のボタンをクリックしてください。

母親の離婚日から300日以内に出産した場合

これで完了です。

 

生まれる前、生まれてすぐに亡くなった場合

生まれる前、生まれてすぐに亡くなった場合
赤ちゃんがこの世に誕生してから間もなく亡くなった場合は、「出生届」を出した後に「死亡届(注5)」を出すことになります。

「出生届」を出すという事は、赤ちゃんがこの世に生まれてきたことが公的に証明され、「名前」も登録されます。

(注5)「死亡届」とは人が死亡した時に戸籍の規定に沿って行う届出。

 
一方、妊娠12週を過ぎて流産など母体内で死亡した胎児については「死産届(注6)」を届け出ます。

戸籍には記載されませんが届出をすることにより、死胎火葬許可証を市区町村から発行して頂けます。

「死亡届」も「死産届」も亡くなってから7日以内に手続きをすることになっています。

(注6)「死産届」とは妊娠12週以降の妊娠中絶や母体内で亡くなった胎児について、死産の届出に関する規程に沿って届け出ることが義務づけられている届出。

 
「死産届」の届出義務者は、「父母のどちらか」です。
父母が届けられない場合は「同居人」、「立ち会った医師」・「立ち会った助産師」の順で届出人となります。

 
「死亡届」の届出義務者は同居の親族者や同居人となります。
弊社の「KOSEKIガイド」が詳しいのでこちらで説明します。
サイトを開いた後の使い方は以下のとおりです。(とても簡単です。)

上記のサイトにアクセスすると、下のような画面になります。
届出人について調べたい場合には、「届出人」欄をクリックしてください。

死亡届

次に、上部中央ポップアップ画面の上から3つ目のボタンをクリックしてください。

死亡届

続いて下の画面が表示されますので、調べたいところを自由にクリックしてください。

死亡届

これで完了です。

 

生まれた時に出生届を出していない場合(無籍者)

生まれたときに出生届を出してもらえなかった場合(無籍者)
生まれたときに出生届を出してもらえず、日本人であるのに戸籍の無い方「無籍者」がいます。

「無籍者」が自分の戸籍を作る方法としては、実母が判明していれば実母が「出生届」を出すか、自分で「就籍届(注7)」を出すことになります。

 
なぜ、「無籍者」という状態になるのか、代表的な事例でお伝えします。

ドメスティックバイオレンス(=DV・家庭内暴力)で、暴力夫(Aさん)から姿を隠している妻(Bさん)に、別の男性(Cさん)との間で赤ちゃんができたとします。

BさんはAさんとの離婚も成立していないので、赤ちゃんを出産し、そのまま出生届を出すと民法の規定により戸籍上の夫が赤ちゃんの父であると嫡出推定され、戸籍上の父はAさんという事になります。

Bさんの立場で考えると、このように出生届を出した場合、Aさんに居所が分かってしまうのではないかという“恐怖感”を覚えることが多いようです。

離婚が成立していなくても、「親子関係不存在の裁判判決」が下りれば、子どもの父がAさんではない事が判明します。

この場合でも、その裁判判決を受ける際に、Aさんと赤ちゃんのDNA鑑定が必要になるので、裁判所でAさんと顔を合わせることになり暴力を振るわれるのではないかという“恐怖心”がBさんの中に芽生え、赤ちゃんの出生届を出せないまま、月日が経過してしまい、生まれた赤ちゃんは「無籍者」になります。

そうならないために、暴力夫と会わないように逃げていても代理人に依頼して「離婚裁判」などで、離婚を成立するという手段もあるようですが、金銭的な理由で裁判を起こすのが困難であるという状況の方もいらっしゃるようです。

 
感情に任せて限度を超えた暴力をふるう・・・この行為が想像以上の波及を呼んでいます。

近年、国も「無籍者」の方々の処遇を見直し、無籍者の方も普通に学校にも通えるようになり、結婚もできるようになりました。

私的な意見ですが、経済上の理由で離婚裁判ができないというDV被害者のための支援措置を、もっと充実させて頂きたいものです。

(注7)「就籍届」とは日本人でありながら戸籍のない者について新たに戸籍を作るための届出。就籍をするには家庭裁判所の許可を得るか、または判決を得て就籍の届出をすればよい。

法務省の「無籍者の方々専用のHP」

 

出生届は重要で有難いもの

出生届は重要で有難いもの
昨年、家系図を作って自分の先祖を知り、ご先祖様からメッセージを頂くという経営セミナーを受講しました。

「家系分析をすると、知らなかった、気づかなかったさまざまな事実が明らかになってくる。それを真摯に受け入れ、見つめることによって、人間性が高まり、仕事も人生も好転するようになっていく。」という言葉に惹かれました。

戸籍を取り寄せて家系図をより正確に作り上げてご先祖様を調べていくわけですが、この経営セミナーの終了と同時に、私が弊社の積年の目標として掲げていながら達成方法の道筋さえも見えなかった課題が一気に解決し、悲願達成!

この家系図を使った経営セミナーの効果・不思議なパワーを強烈に実感しました。

 
その経営セミナーの講師、立命塾の天明茂先生が書かれた本「なぜ、上手くいっている会社の経営者はご先祖を大切にするのか」の中に、次の様な一説があります。

宇宙のできごとに意味のないことはないという。母体に宿ったという事は必要・必然であり、家系の上からも何らかの意味があるという事だ。<略>夫婦に何かを教えるために水子として生まれる運命を持っていたのかもしれない。

水子とは流産等で母体に宿ったが何らかの原因で生まれ出ることのできなかった生命の事で、戸籍にも記載されません。

天明先生ご夫婦の間にも、お一人水子がいらっしゃるとのことで、このお子様を授かった時の奥様の心理状態が不安定だったことが、原因だったと推測されたそうです。

この水子がいたおかげで、大きな反省材料に気づき、その後の幸福な家庭づくりに欠かせない出来事になったと書かれています。

家族にとって、大きな役割を果たした存在だという事ですよね。

 
そして、私自身も家系調査をし、赤ちゃんの時に亡くなった弟がいたことや、幼いころに両親から聞かされていた姉がいたことを思い出しました。

改めて自分の戸籍を取得し内容を読んだ時に、言葉では表現しがたい懐かしい感覚を覚えました。温かな感覚でした。

私には元気な弟と妹(と言ってもいいオジサンとオバサンですが)がいます。

3人とも揃って元気なのは、天使になった姉と弟が守ってくれているおかげかもしれません。

これからも大切に供養していきたいと思います。

  
戸籍の国「日本」に生まれた私たちにとって、「出生届」というものが、いかに重要なものかお分かりいただけたでしょうか。
出生届は日本人にとって重要な届出です。

当たり前過ぎて考えたことも無い方が多い事と思いますが本当に「有難い」ことなのです。
出生届の奥深さが伝わりましたら幸いです。

感謝です!

 
アポロアイシーティー株式会社 代表取締役 岩永美香

【略歴】
岩永美香(いわなが・みか)
アポロアイシーティー株式会社 代表取締役
水戸市役所に30年間勤めていました。
戸籍係長時代の厳しい経験を元に、KOSEKIガイドを開発し、全国のお役所に向け展開中。

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