「モノを売る」という行為は、太古の昔から世界中で盛んにおこなわれてきましたが、いつの時代でも、どの国でも、売れる人と売れない人が大きく分かれます。
なぜなら、そこには理由があるからです。
それがわからないままにモノを売り始めたり、商売を初めたりしても、よほどのセンスがない限り大変な苦労をすることになります。
そこで今回は店頭販売のプロの目線から研修講師を務める私、久野和人が「売れるために不可欠な6つの販売チェックポイント」についてご説明させていただきます。
売るために絶対に必要な6つのチェックポイント
販売は、接客でモノを売るのも、ネットでモノを売るのも媒体が違うだけで基本は同じです。
実は、モノやサービスを売るには、
注意しなければいけない大事なポイントが6つあるんです。
販売をする人はそれが明確でないと、答えが見つからないままいつまでも悩むことになり、販売員を指導する人もそれがわかっていないと的確な指導ができないため、リーダーや自分の右腕をつくることができません。
まずは、自分がどの領域に問題があるのかを明確にしましょう。
マーケティング、チーム(職場環境)、メンタルの状態、自己プロデュース、関係性の構築、商品プロデュース・・・これら各ポイントが良好な状態の時、モノは面白いように売れます。
反対にこれらのどこかのポイントに問題があれば、販売は大変苦労することになります。
だから、思うように売れないといった時は、どの部分に問題があるのか?それを見極める必要があります。
この時、気を付けないといけないのは、見直す順番です。
図の円の大きい範囲から・・・
つまり、マーケティング → チーム(職場環境)→ メンタルの状態 → 自己プロデュース → 関係性の構築 → 商品プロデュースの順に問題がないか見ていくことが大事になってきます。
なぜなら、どれだけ良い商品や良い媒体(ツール)を持っていても、デタラメなマーケティングやチーム状態では絶対に良い結果はでないからです。
・マーケティング
・チーム(職場環境)
・メンタルの状態
・自己プロデュース
・関係性の構築
・商品プロデュース
売るためのマーケティング
最初のマーケティングの部分に問題があると、どんな凄腕の販売員が来ても中々モノは売れません。
マーケティングとは、簡単に言うと「売れる仕組み」です。
「誰に」「何を」「どこで、どうやって」売ればいいか・・・
これを突き詰めて考えていくことが必要になります。
その仕組みが出来上がると、売り手と買い手の間にあるギャップが埋まり、何でも無理なくスムーズに円滑に売れるようになります。
実は「お客様と対峙する前に勝負は決まっている」のです。
たとえば、目じりの小じわを気にしている40代の主婦に売りたい高価な化粧品を、女子高生ばかりが集まるディスカウントストアで販売しても売れませんよね?
また、携帯のゲームアプリの宣伝を新聞折り込みでやってもおそらく効果は出ないでしょう。
今言った例は極端にチグハグなので、笑ってしまうかもしれません。
でも、実際こういうことをしている人や会社は今でも少なくないんです。
あなたが売りたいターゲットは明確ですか?
あなたが売りたい商品の良さは、お客様から見て価格を超越するものですか?
最適な媒体(ツール)、最適な場所、最適な方法で売っていますか?
お客様と対峙する前に、まず深くマーケティングを考察してみてくださいね。
・売りたいターゲットは明確か?
・価格 < 商品価値
・最適な媒体か?
・最適な場所か?
・最適な方法か?
売るための環境・メンタル
次に、チーム環境やメンタルについて考えてみましょう。
社内やチーム環境(ブレーン)が悪いと派閥が出来たり、足の引っ張り合いやサボり癖がついたりしてプラスに組織が機能せず、そういった中ではいくらやる気のある人間がいても力を発揮することができません。
また、販売員個人も高いモノを薦めるのに抵抗があったり、個人事業主でもお金を儲けることにどこか罪悪感があったりすると、思ったような成果を上げることはできなくなってしまいます。
「高いモノを薦めるのに気が引ける」
「お金持ちになるのにテレがある」
といったお金に対してマイナスの信念(ビリーフ)を持っていると、どれだけ良い商品(サービス)を持っていても、どれだけ販売テクニックを持っていても、それを取り除かない限りモノは売れませんし、成功することもありません。
気分次第で頑張ったり、サボったりします。
気分次第で買ったり、買わなかったりします。
人は売るのも買うのも気分次第なのです。
相手が人間である以上、販売ではどうしてもこの問題は避けて通れません。
だから、チーム環境やメンタル面の改善は必須です。
これらは販売以前の問題となるため、面倒でも、できるだけ早急に取り組まれることをおススメします。
マーケティングとチーム環境・メンタルの部分が良好でないと、どれだけ販売テクニックを磨いても意味がありませんからね。
十分気を付けるようにしましょう。
・販売員のメンタル
・チーム全体の環境
では、次からは実際にお客様と対面する際のテクニック部門について説明したいと思います。
売るための自己プロデュース
よく販売研修や上司からの指導で「トークが上手くなればモノは売れる」という風に教えられることがあると思います。
しかし、僕の経験から言うと、これはウソです。
もし、これが本当なら売れている人と同じトークをすれば、みんな同じだけ売れないとウソですよね。
でも、実際はどうですか?
そうですよね。そんな風にはなりません。
当たり前です。
なぜなら、人間は言葉以外にもいろんな情報を発信しているからです。
買い物に行って、お目当ての商品が見つかってもそれを説明に来た人が感じの悪い人だと、ほとんどの人はそこで買いません。(さらに、その商品の印象まで悪くなります)
一方、お目当ての商品ではなかったけれど、それに近い商品はあって、説明に来てくれた人がとても印象が良かったので、それを買ったという人は少なくないはずです。
そうなんです。
話の内容でも、話術でもないんです。
もっというと、商品の品質でもありません。
売り手の印象が購買には大きく関係しているということなんです。
第一印象が悪いといくら頑張って説明しても、お客様は話を聞いていません。
これは何も直接の接客だけでなく、ネットやSNSでも同じです。
どれだけいい商品を扱っていても、売り手の様子、写真やサイトデザインからくる印象が悪ければ、購買判断をする前にすぐに観覧を停止します。
いかに自分を見せるか。
これを意識することも販売では非常に重要なことです。
自己プロデュースが悪いと説明に入る前にお客様の気持ちは離れていくので、十分気を付けてくださいね。
・トークよりも第一印象
・いかに自分を見せるかが大事
売るための関係性の構築
店頭で販売する場合、相手は初対面の人ばかりです。
だから、一瞬でよい関係性を構築する(コミュニケーションを取る)必要があります。
なぜなら、人間はモノを購入する際、信頼のある人から買う確率が高くなるからです。
たとえば、怪しげな格好の黒いサングラスをした男がいきなり来て、「あなたにピッタリな商品があるのでお勧めしたいのですが」とインターホン越しに言われても、誰もドアを開けないでしょう。
しかし、身内や親友から「あの商品、あなたにピッタリだからすぐに買った方がいいよ」と言われると数分後に買っていたりします。
両者は同じものを薦めていたかもしれません。
いや、ひょっとしたらサングラスの男の方が、安くて品質の良い商品を薦めていたかもしれないんです。
でも、その男から買うことはないわけです。
先ほどの自己プロデュース同様、よい関係性が構築されていると商品の品質や価格は関係なくなってしまいます。
それだけ、販売においてコミュニケーションは大事だということです。
(※SNSが販売に有効なのは、じっくりと信頼関係が構築できるからなんですね。ただ、ネット上でのコミュニケーションの取り方が下手だと逆効果になるので注意してください)
短時間で相手の心を開けるテクニックはいくもあり、とてもここでは書ききれません。
ただ、その土台となっているのは「相手に関心を持つ」ことです。
これがないまま技術で何とかしようとしても、よい関係性を構築するのは無理でしょう。
人は、自分に関心を持ってくれた人に好意を抱きます。
いくら媚びたり、持ち上げたりしても、それが利害関係の上に成り立っている場合はすぐにバレてしまいます。
相手に関心を持って、よい関係性を築けるかどうか・・・
これも販売では非常に重要なポイントです。
・人は好きな人からモノを買う
・こちらから相手に関心を持つ
売るための商品プロデュース
最後は商品プロデュースについて。
良くトークが販売では大事と言われますが、そもそもトークとは何を意味するのでしょう?
それは、「価値を伝えること」です。
それ以外は、コミュニケーションを取るためのおしゃべりです。
モノ(サービス)の価値はいろいろあって、僕は研修などでは次の図の立方体を用いて考えてくださいと言っています。
普段、お客様は一方向からしかモノを見ていません。
安いかどうか、得か損かといった「理性」が主な購買の判断基準になっています。
また、販売員も大体、お得情報や実績・スペックの説明に終始しています。
でも、実際はもっとたくさんその商品には価値があります。
特に、「何が得られるのか」、「詳しい利用用途」、「ポリシーやストーリー」といったことは、普段お客様が見えていない上に、感情を大きく揺さぶる要因でもあります。
理性で考えるお客様を感情で動かすのです。
「買う気がなかったものまで買ってしまった」とか「今まで全然気にもしていなかったものが気になってしょうがない」というのは、そういったことから感情が刺激されたからです。
・理性ではなく感情で動かす
・何が得られるのか
・詳しい利用用途
・ポリシーやストーリー
先にも書きましたが、人は気分でモノを買います。
印象のいい人が自分に関心を持って接してくれるだけでも、人は気分が良くなります。
その上に、自分の価値観に合った感情を揺さぶられるような価値を提示されると・・・
高くても買うし、たとえそれが遠い場所でもそこまで足を運ぶものなんです。
だから、販売においてこの6つのポイントが大事なんですね。
いかがでしたでしょうか?
物事には、原因があって結果があります。
原因を改善すれば、当然結果は変わります。
もし、今販売で悩んでおられるならば、一度足を止めてじっくりとこの6つのポイントに問題がないか順番に検証してみてください。
また、販売員を指導されている方も、教え方を間違えると部下を路頭に迷わせるだけでなく、離職率を上げることにもなりかねないので、この6つのポイントは是非抑えておいてもらいたいと思います。
あなたが変われば、周りは変わります。
社会の変化は激しく、世の中は刻々と変わっていきますが、いつの世も本質だけは変わりません。
アフターコロナの時代もそれは同じ。
こういう時こそ基本に立ち返ること。それを忘れずにいたいと思います。
では、あなたのビジネスがますます発展していくことを心より祈っています。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
久野和人(ひさの・かずと)
有限会社リボン 代表取締役
数百社1,000アイテム以上のプロモーションに携わる店頭販売のプロ。女性スタッフ育成管理歴20年。直接指導1,000名超え。カリスマ販売員、女性リーダー多数輩出。
2005年有限会社リボンを設立。百貨店・量販店に販売員を派遣する店頭プロモーション事業をスタートし、食品・日用品・理美容品・家電品など数百社のメーカーの店頭販促に携わる。その際、売上を上げるには現場力が不可欠と痛感し、経営の傍ら自らも店頭で販売することに。この時、多くの売場でお客様と接した体験から、消費者の購買心理がわかるようになり、数々の販売実績を上げ評価される。現在、自社への店頭プロモーション依頼は年間2,000件にのぼる。また、2011年からは全国の大手企業や商工会議所等でセミナー講演活動を開始。販売員育成研修や起業家コンサルタントとしても活動を展開。現在に至る。
世界最高峰心理学機関 NLP認定マネークリニック・トレーナー資格保持。内閣総理大臣認証NPO法人コミュニケーション能力開発機構認定、コミュニケーション心理学1級・メンタルトレーナー1級取得。
趣味は音楽鑑賞、楽器演奏(ベース)、ルアー・フライフィッシング、映画鑑賞、読書。
久野さんのHP 店頭販売事業部
販売研修、コンサルティング事業部のサイト
【著書】
著書に「売れる店頭は何が違うのか?思わず買ってしまう集客販売の極意」がある。